防災士とは
私は、学生のうちに「防災士」の資格を取りました。
そこで、防災士についての記事もたくさん書いていきたいと思います。
「防災士」はなぜできた?
私たちが住む日本という国では、世界の他の国と比べて、気象・地形・地質等の
自然条件から、地震や津波、台風や洪水などの自然災害が起こりやすく、
過去にも大きな自然災害が多く発生しています。
そのため国や地方公共団体は、「防災」を重要問題として対策を行ってきました。
また、学問的な研究においても日本は世界の中でもトップクラスです。
しかし、ここで今までの災害対策に大きな転換を迫る出来事が起きます・・・。
それは・・・。
1997年1月17日の 阪神・淡路大震災 です。
災害が起きた場合、その規模が大きければ大きいほど公的支援の機能は弱化します。
消防・警察などの機関は24時間即応の態勢を取っていますが、基本的に当務の職員が対応しており、非番などの職員はいません。
さらに、応急対応にあたる職員はもちろん、その家族も被災しています。
そのため、被災地では、ライフラインの途絶はもちろん、日常のあらゆるシステムが崩壊します。
阪神・淡路大震災では、地震直後に16万4,000人の方ががれきの下敷きになりました。
そのうち、約8割の方は自力で脱出しましたが、約3万5,000人の方が生き埋めになりました。
この要救助者のうち、近隣の住民が救出したのは2万7,000人で、その8割が生存していました。その一方で、警察・消防・自衛隊が救出したのは約8,000人で、その半数が亡くなっています(下表)。
救出した人・団体 | 救出人数 | 生存割合 |
---|---|---|
近隣住民 | 2万7,000人 | 8割 |
警察・消防・自衛隊 | 8,000人 | 5割 |
このように、災害発生から24時間以内の救出は、特に生存率が高く、
家族や近隣の人達が互いに助け合いながら多くの命を救いました。
このことから、以下のようなことが明らかにされました。
- 災害は思いもしないところで、思いもしない形で発生しうる。
- 災害が大きければ、国や地方公共団体の救助などがすぐには期待できない。
- それぞれの地域での総合的な力により、災害に備えることが必要。
このことから、「地域防災」というワードがいわれるようになってきました。これを実現するためには、1人1人が防災について考えなければいけませんが、まずは防災について充分な意識と一定の技能・知識を身に付けた者が中心となり、地域や職場などで力を合わせていくことが重要であり、有効です。
そこで、この阪神・淡路大震災を教訓として、「人」という資源を活用して社会全体の防災力を高めるために「防災士」制度が生まれました。
東日本大震災でも、阪神・淡路大震災以降に示された、犠牲者や被害などを減らす「減災」という考え方が改めてフォーカスされ、「地域防災」の重要性や防災士制度の認知の重要性が高まってきています。
防災士はどんな場面で活躍するの?
一般に、災害被害の軽減は、「自助・共助・公助」の組み合わせで実現されるといわれています。基本的に、自助・共助の場面で活動することになります。
1.自助
災害対策の基本は「自助」であり、「自分の命は自分で守る」という心構えです。
阪神・淡路大震災では、亡くなった方の8割以上が、地震直後、倒れた家屋や家具などの下敷きになり、短時間のうちに亡くなっています。
このようなことを防ぐために、日頃から家の耐震補強や家具の転倒防止対策などを行っておくべきです。
災害時に大けがをしたり、まして命を失っては、家族はもちろん隣人や職場の人を助けたりできず、防災士として復旧・復興に貢献することができません。
したがって、防災士は日頃から身の回りの準備を怠らず、防災に関しての知識や技能を蓄え、「救助される人」ではなく「救助する人」を目指さなければいけません・。
2.共助
前述のように災害対策の基本は「自助」ですが、個人の力には限界はあります。地域の防災力を高めるには、近隣の人や家族と協力しながら防災にあたることが大切です。
事実、阪神・淡路大震災の際、要救助者の8割以上を助けたのは近隣住民でした。
被災後の救援・復興には公的援助やボランティアの支援も期待できますが、発災直後の救助はまわりにいる人しかできません。
また、災害発生後、復旧・復興の段階では地域住民の協力とともにボランティアの存在が欠かせない。日本のどこかで災害が発生した場合、救援活動を速やかに立ち上げる準備をしておくことはとても重要です。
3.公助
国民や住民の命や財産の安全を守ることは、国や地方公共団体の最大の任務です。
事前の対策 | 発災時 |
---|---|
・避難路を確保し火災の延焼を防ぐための幅の広い街路の整備 |
自衛隊・消防・警察による ・救助活動 ・避難所の開設 ・救援物資の支給 ・仮設住宅の建設 など |
これらのハード・ソフト対策は、国・地方公共団体の業務として行われますが、地域の細かい実情に合わせて施策を実施するためには、地域住民の協力が必要です。
防災士はこのような公助による対策や取り組みをよく理解し、防災訓練や市民啓発など、様々な場で、「行政と市民の連携」を図る中核として活動するべきといえます。
防災士に期待される役割
防災士に期待される役割、防災士として行える事柄を簡単にまとめます。
〇平常時
自分の身のまわり、家庭・職場の防災・減災対策の実施。地域や企業における防災訓練・研修などの実施や参加。
ex)
・家庭、地域社会や職場での話し合いや訓練を行い、備蓄など防災対策を実施する。
・建物の耐震や家具の固定などを積極的に実施し、周囲への普及に努める
・避難路や避難場所の確認・確保。
〇災害時
消防や警察・自衛隊などの公的支援が来るまでの間、救助活動や消火活動、避難誘導などを積極的に行う。
ex)
・家庭や職場、地域の住民の安全確認を行う。
・災害時要配慮者の避難支援を行う。
・避難指示、避難勧告を周囲に伝え、行動を促す。
〇災害発生後
公的組織やボランティアと協力し、避難所の運営や被災者支援活動を行う。
ex)
・安否確認や帰宅困難者の支援を行う。
・災害サイトや自治体などへ、正確な被災状況を伝える。
・チャリティー活動やボランティア活動を行う。
防災士の社会的評価
最後に、防災士の活動とその社会的評価についてまとめます。最近では、防災士に対してその専門性を活かした支援活動を期待する行政側の施策も徐々に現実化しつつあります。
静岡県の例
:県の地域防災計画において、防災士の活用を明記している。
兵庫県の例
:「ひょうご防災特別推進員」として、県が支援する防災講習の講師の有資格者に、建築士などとともに指定されるという画期的なしくみが創設された。(2010年1月)
宮城県の例
:「宮城県防災指導員」
愛媛県の例
:「えひめ防災インストラクター」
この他、多くの防災士が自宅や職場での防災活動はもちろん、自治体や地域の防災訓練への参加やラジオ・テレビ出演、被災地でのボランティア活動など、各地で活躍しています。
このように、防災士の日々の活動によって、防災士の社会的評価が高まりつつあります。
【日本防災士会HP】